日本での生活体験を通してあらためて感じた母国のこと―中国と日本の温泉文化の違いから

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陳 光華
(チン コウカ)

 中国の北京から日本に来て一年半がたちました。日本の生活にもずいぶん慣れてきました。日本に来る前、私は中国のことしか知らなかったので、何でも中国のものが一番だと思っていました。でも、東京ディズニーランドに行ったら、中国の遊園地よりきれいで、夢があって、ワクワクしました。また、日本でおすしや刺身を食べて、中華料理のほかにもこんなにおいしいものがあるのだとわかりました。私は中国のことしか知らない「井の中の蛙」だったのです。

 今日みなさんにお話ししたいのは、日本の温泉に入って、あらためて感じた中国の価値観についてです。

 みんなさんご存知ですか、中国では、毎日お風呂に入る習慣はありません。シャワーだけです。裸で他の人と一緒にお風呂に入ることも、ありません。温泉に行く時は、みんな水着を着ています。ですから、男の人も女の人も一緒に入れます。家族やカップル、友達と一緒に楽しめるところです。温泉というより、娯楽施設です。プールもあるし、水の中でゲームを楽しんだりできます。みんなでわいわいにぎやかに過ごします。

 中国の温泉はとても大きいです。人口も多いし、大きいことはいいことだという考え方があるので、中身よりも大きさを競います。大きいということは中国では権力の象徴です。50万人もの人を収容できる天安門広場は世界最大の広場として有名です。中国人は誰にも負けないものを作りたいという気持ちが強いのだと思います。北京オリンピックでは、鳥の巣スタジアムやウォーターキューブなどに、4兆円以上のお金をかけました。中国はまだ発展途上国なのに、オリンピックのために来た外国人が楽しめるように、惜しまずお金を使いました。ちょっと頬をふくらませて太っているように見せかけていますが、情熱的で、客好きである中国人らしいです。

 話を温泉に戻しましょう。私が初めて日本の温泉に入ったのは、日本に来て、半年ぐらいたってからでした。親しくなった日本人のおじいさんに誘われて、温泉に行きました。男湯ののれんをくぐると、はだかの人の姿が目に入りました。本当にここで、全部脱いで裸になるの?どうしよう。もじもじしていましたが、おじいさんはさっさと服を脱いでいます。すごく恥ずかしかったですが、私も思いきって裸になり、おじいさんの後についていきました。中に入ってまたびっくりです。みんな静かに体を洗ったり、温泉につかったりしています。お湯の中で、中国と日本の温泉は全然違うなと感じました。日本の温泉は大きくないけれど、中身がとても充実しています。外の景色が楽しめるような露天風呂があったり、脱衣場がきれいに整っていたりします。ハード面よりソフト面を大切にしています。中国と日本の大きな違いだと思います。

 また、みんなお湯に入る前に丁寧に体を洗っていることに驚きました。中国では水着を着ているので、入る前に体を洗うことはありません。水やお湯をかぶる習慣もほとんどありません。日本に来る前は、それが普通だと思っていました。でも日本のルールに慣れた今は、日本の習慣を見習った方がいいと思います。日本人はそうすることで、お湯をよごさないように、できるだけ周りの人に迷惑をかけないように気を使っています。中国人は日本人のように周りの人のことを考えることが少ないです。周りのことを考える余裕がないからかもしれません。日本人のように、他の人を思いやる気持ちが持てるようになるといいなと思います。

 日本人は勉強や仕事でたくさんストレスがあるので、温泉に入ってリラックスして、ストレス解消をしていると聞きました。修士一年生の私も、実験、研究、バイトと毎日の生活の中で、様々なストレスがあります。そんな私に温泉は大切なストレス解消の場所となりました。今では日本人と同じように、温泉につかって「あー、極楽、極楽」と思えるようになったのです。

 以上が、日中両国の温泉の違いを比べて、中国の今の考え方や生活習慣について考えたことです。みなさんはどう思われるでしょうか。

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