私が感じた日本とベトナムのこと

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ブ ドック ツ アン

 私はアンと申します。ベトナムから来ました。現在福井大学の1年生です。

 皆さん、もしベトナムはどんな国かと聞かれたら、どう答えますか。すぐピンとこないでしょう。

 ベトナムのイメージについて日本人の友達に聞いてみました。すると、「東南アジアにある」「暑い」「料理が辛い」という答えしかもらえませんでした。一つの国、一つの民族なのに、それしか知られていないのは残念だと思います。それで、皆さんにベトナムのことを知ってもらいたいと思います。

 私は二年半前に、成田空港からバスで8時間、やっと岩手県の盛岡に来ました。盛岡は田舎のせいか、皆ゆっくり歩いたり、のんびり生活をしたりしているみたいで、私はびっくりしました。私のイメージとは全く反対でした。おそらく毎日自転車で学校に通っていて、駅まであまり行かなかったせいで、日本人の忙しい姿を見なかったからでしょう。だって、東京まで行くと全然違います。

 東京に遊びに行った時はちょうど通勤時間なので、電車の中に息が出来ないぐらい押し込まれました。そして、ドアが開いた途端に、皆が電車からとびおりて走る姿を見ました。「ここはやっぱり日本だなあ」と思いました。よく働いている日本人の姿が大好きです。

 それで、ベトナムでは皆はのんびりすぎるのではないかと思ってしまいました。ベトナムは独立戦争とベトナム戦争で当時の2つの大国のフランスとアメリカに勝ちました。素晴らしい国だと思いました。しかし、勝利を喜んで、のんびりしてしまって、今まで経済も技術もなかなか発展していません。

 それに対して、日本はアメリカに負けてしまいましたが、戦後、皆で団結して、国のためすごく頑張ったみたいです。その結果、日本は「アジアナンバーワン」になりました。ベトナム人もこのように頑張りたいです。

 日本に来て、一か月後アルバイトを始めました。アメリカに留学している友達から聞くと、外国でお金を稼ぐのは簡単らしいです。しかし、日本ではそうではありません。ベトナムではアルバイトをやったことがない私は一日6時間働いて、正直というと大変でした。しかし、二年半もたって、今もう忙しい生活に慣れてしまいました。むしろ、のんびりしているベトナム人の姿には変だと感じます。日本はこんなに発展しているのに、まだ頑張っていますから、ベトナムの皆も頑張らなければいけません。

 でも、日本に来て、もう一つびっくりしたことには、カセットレコーダーを使って、アナウンスを流すことが多いです。駅や病院やスーパーの中でよく聞こえます。確かに、同じことを繰り返し言うのは疲れるかもしれません。しかし、人は機械と違って、同じことでも色々な方法で表現できます。私にとっては人の声が聞こえることが大切です。なぜなら他の人の声を聞くと、自分が一人ではないと思って、孤独に感じません。例えば、日本では、スーパーでみんな、商品の間を静かに移動して、黙って買い物します。人の代わりに機械が喋ります。録音されたテープからは、アナウンスがただ叫び続けます。レジのお姉さんはロボットのように少しも無駄のない動きです。人と人の会話がまったくありません。

 発展したせいというのはおかしい言い方かもしれません。しかし、日本は発展したせいで、人と人の会話を失って人間関係も悪くなってしまったと思います。最近、テレビで自殺や殺人事件のニュースが多いです。人間関係は一つの理由として考えられます。日本人は話をしようとしても相手がいなくて、だんだん自分自身が冷たくなって周りの人にあまり関心がないというか、ちょっと我がままで、とにかく自分しか見えない生活になってしまうんでしょう。実は私は、2年間隣の人と一度も話したことはありません。

 でもベトナムでは違います。店では、売る人と買う人の間で「会話」がなければ商売が始まりません。「いくらですか」とか「ちょっと安くしてくれる」などとても簡単なものですが、会話そのものは、人と人とが会ったときに欠かせないものだと思います。それに、ベトナムでは同じ町に住んでいる人はグループになって、何か困ったことがあれば、相談して、解決策を見つけます。そのおかげで、ベトナム人はあまりストレスを溜めていないと言えます。

 今までの経験を基に、やっぱりどこの国でもいい点もあれば、悪い点もあることが分かるようになりました。二年半は長い時間とは言えませんが、その間に様々なことを身につけたし、人生の中で本当に大切な体験でした。これからも、大学の生活を続け、色々な人と出会い、もっともっと日本のことを理解して、それから、ベトナムのことをもう一度真剣に見直したいと思います。

 ご静聴ありがとうございました。

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