日本にいる僕から見たインドネシア

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ADRIAN RABUNA
(アドリアン ラブナ)

 私は、日本に来て今年で5年、福井での生活は4年目です。福井に来る前に日本語の勉強のため、1年くらい東京に住んでいました。東京では、電車がたくさん走っていて、交通は非常に便利です。でも、人が多くて、満員電車の中でよくいらいらしていました。私は、大勢の人が集まるにぎやかな場所はあまり好きではありません。そんな東京から初めて福井に来たとき、人が少なくて静かで、良い町だなと思いました。ちょっと不思議な気持ちでした。日本は、どこでもビルがたくさんあって、にぎやかだと思っていたのです。ところが福井の街は、電車はあまり見かけないし、高いビルもあまり見当たりません。田んぼがたくさんあって、日本の都市にも、こういうところがあるとは思いませんでした。福井は田舎っぽくても、やはり日本です。インドネシアの町と比べれば、福井はやっぱり違います。町がきれいなのです。道路や川にゴミが見あたりません。

 インドネシア人は粗大ゴミをあまり捨てません。電化製品が故障したら、修理して、また使います。テレビや冷蔵庫がこわれたら、まず自分で原因を調べます。自転車はもちろん、バイクだって、ほとんどの人が自分で直します。どうしてもダメな場合、ようやく業者へ持って行きます。日本のように、簡単に捨てません。それでも、町を流れる川は、どこもゴミであふれています。川沿いに住んでいる人たちが生活ゴミをどんどん捨てるし、空き地があればすぐにゴミを捨てます。みんながやるからあたりまえで、良くないことだという意識がうすいのです。政府レベルではなく、インドネシア国民の一人一人が環境について考え方を変える必要があると思います。

 日本は、環境問題について色々な対策を行っています。たとえば、ゴミの分別です。ゴミを分別してリサイクルし、新しい商品に加工します。また、テレビなど粗大ゴミを捨てる場合には費用がかかります。これは、ゴミの量を少なくするためにとても良い方法だと思います。ところが、インドネシアでは、まだ分別が行われていません。分別しないと、ゴミの量が増えるし、燃やせないので埋め立てるしか方法がありません。だから、ジャカルタなど大都市のゴミ処理場がどんどん広がって住民から苦情がでています。

 みなさんもご存じのように、インドネシアは天然資源に恵まれています。木材や石油など、多くの資源が世界各地に輸出されています。資源の輸出によって、インドネシアは豊かな国であるはずなのです。ところが、実際には、貧しい人がたくさんいます。天然資源の豊かさが国の豊かさにつながっていません。矛盾していると感じます。インドネシアは、国土も広く天然資源も豊かですが、それを管理する人材があまりにも不足しているからです。日本は天然資源の少ない国ですが、人的資源に恵まれているので先進国になったのだと思います。インドネシアに足りないもの。それは、資源ではなく、資源を管理する人の技術や能力です。私は、この日本で知識や技術を学んで、それを国の人たちに伝えたいと思います。

 日本に留学してよかったと思うことは、自分の国を客観的に見られるようになったことです。また、いろいろな国の人たちから、インドネシアについて、どのように思っているかを聞けることです。インドネシアは、まだまだこれからです。国を離れて日本で暮らしているうちに、私は自分の国が嫌いになるどころかもっと好きになりました。「国家は人なり」と言います。国の人たちに知識や技術を伝えること。そして、人々の意識を変えること。国のために役に立ちたいという気持ちが、今、私の中でどんどん高まっています。

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