私が見た日本人

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王 玉艶
(ワン ヨウヤン)

 私は王玉艶と申します。今回、日本に対する自分の感じた事を述べるチャンスをいただき、とても光栄に思います。

 私は去年4月に、中国人留学生の妻として日本に参りました。私は日本が好きで、特に美しい桜にあこがれていました。しかし本音は、主人に対する恋しい気持ちが我慢できず、思い余って日本に来てしまいました。

 来日して感じたことは、やはり日本の桜は美しくて、さらに紅葉は綺麗で、何よりも日本人の心はもっと美しくて綺麗だと思いました。

 それは、日本に来てすぐ、「石森さん」という日本人にお会いしたことです。きっかけは、アルバイトをしようと思い、覚えたての日本語と身振り手振りで、ローソンを尋ねました。しかし、なかなか理解してもらえず、困り果てている私に、買い物をしておられた彼が、片言の中国語で声をかけ「諦めないで、頑張ってやりなさい」と励ましてもらったことです。

 これを機に何かとお世話をしていただくようになり、怪我をした時には看病してもらったり、自転車用のレインコートを買っていただいたり、励ましだけでなく生活面でも、まるでお父さんのように面倒みて下さり、ほんとうに嬉しくて感動しました。

 石森さんはずっと、中国の留学生を助けていらっしゃるそうです。私はそのことを聞いて、中国で有名な日本人の「藤野厳九郎」先生のことを思い出しました。こともあろうかある日、「藤野厳九郎」先生の子孫の「藤野恒男」先生に会わせてくださいました。何と運命的でありましょう、それ以来私は先生に、月一回日本語を教えていただいております。

 先生には、簡単な会話から習いました。始めのうちは何度も忘れたり、間違えたりしていましたが、先生は辛抱強く励ましてくださいました。でもやはり日本語は難しく、特に「敬語」の使い方など、いろんな言い方があるのに驚きました。私にとって「藤野恒男」先生は、魯迅にとっての「藤野厳九郎」先生のように、尊敬でき見習う事の多い方でいらっしゃいます。

 お陰さまで少し日本語に慣れた私は、喜多方ラーメンでアルバイトをする事になりました。この店では、お子様からお年寄りまでいろんな方が来店されます。これだけ多くの方に好まれている「ラーメン」は、「寿司」と同様に日本を代表する食文化だと感じました。

 喜多方では何種類ものラーメンがあり、工程が複雑なのにすばやい調理、それでいて、きれいな盛り付けなど、私にとって、言葉や習慣の違いと、覚えることの多さに不安を感じていました。しかし社長や店長をはじめ皆さんは、丁寧に教えてくださり、家族のように接していただき、まるで自分の国にいるような親しみを感じます。喜多方で働くお陰で、私はたくさんの日本人に接するチャンスができ、日本語もだんだん上手になってきたように思います。

 私にとって、アルバイトすることの重要性は、ただ収入を得るだけでなく、仕事を通して日本語や日本文化を勉強をすることです。

 喜多方で面白い日本語を習いました。それは「方言」いわゆる「福井弁」です。仕事に入ると「かたいけの〜」「てきのないか〜」の挨拶に始まり、「スープをつるつるいっぱいいれるんやざ〜」と指示が飛び、失敗しても「だんね だんね今度から気いつけねや〜」と励ましてもらったり、日常会話では「けなるいの〜」「もつけねえの〜」「ほやほや○○やのう〜」など、不思議な言葉でした。「敬語」は相手を敬う言葉、「方言」は相手とさらに近くなれる言葉です。日本人の心の美しさはこのような言葉を使う、日本文化にあるように思え、感動しました。

 この喜多方で働いて、もう一つ感動したことがあります。それは、環境保護を重視していることです。割りばしを若狭塗り箸に替えたり、使った割り箸を洗って乾燥し、紙の原料として製紙工場に送ったりしています。なかなか、このようなことは誰にでもできることではありません。環境保護はやがて人間社会を救う道であり、日本人の強い意識に感心しました。

 社長は「従業員は仲良く、お客様の立場になって働き、社会に貢献する」といつも言っておられます。今では「福井弁」が飛び交う雰囲気の中で、お客様に対する笑顔やサービスや責任感など、前向きな考え方を見習い、日本や中国の未来に貢献したいと思っています。

 私は日本に来て短いけれど、沢山の親切な人に出会って、本当に素晴らしいと思っています。出会った人から、まるで親戚のように、励ましと、大きな支持と、助けをいただきました。

 今後、私はできるだけ恩返しをしたいと思っています。たとえば、中国語を教えたり、通訳をすることです。日本で出会った人たちの心に、「私と一緒にいた時間」を少しでも残すことができたら、大きな収穫です。まだ日本語が上手ではありませんが、私の思いを聞いていただいたことに感謝し、その思いが皆さんに理解していただければ幸いです。

 最後に、今度帰国した時には、家族や友達にこう言ってもらいたいです。「あんた日本に行って けなるいの〜」 以上有難う御座いました。

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